美術準備室の窓から

美術教育、また教科以外の教育に関する研究や研修の記事、その他教育にまつわる思考を掲載します。

美術科教科主任 教諭 黒沼靖史

聖徳大学附属女子中学校高等学校 教科主任(美術)

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校高等学校 教科主任(美術)兼務

 

筑波大学芸術専門学群卒(洋画専攻)

日本アクティブラーニング学会会員

日本STEM教育学会会員

芸術思考学会会員

東京藝術大学教育研究会会員

学びの共同体研究会参加

高等教育問題研究会(FMICS)会員

松戸市美術会会員
松戸自主夜間中学美術授業担当

 

Viscit ファシリテーター

AppleTeacher

▶未来の先生展2017(講座内容アセット)

 

▶︎個人ホームページ(kuronuma.jimdo.com)

 


思いやりとデザイン思考

共感(empathy)から始まるデザイン思考と東京聖徳学園の建学理念「和の精神」との間にある共通の価値観が本校美術の授業でデザイン思考を強調するひとつの理由です。

これからの時代に必要とされる汎用的な能力・思考行動スキルとしてデザイン思考はとても有用なのは言うまでもありません。

ここで触れたいのは、Stanford大学D-schoolによるデザイン思考の「人間中心のデザイン」であること。

困っている人のために気持ちを寄り添い、考えに考え抜き、悩むだけでなく行動に移す。不十分だったらすぐより良くなるようにやり直す。社会生活や人の生き方に通じるものだと思います。

人との協調を説く「和を以て貴しとなす」、デザイン思考の最初のフェーズと相通ずる「思いやりの心を持つ女性の育成」。

聖徳でのデザイン思考は流行の思考スキルに留まるデザインブームとは一線を画す、人としての生き方を学ぶものです。

→デザイン思考 スタンフォード大学 D-school

インクルーシブデザイン

多様な人々の存在の中、ものづくりは何を目指すのか?

ある問いがあります。

「脚の不自由な高齢の女性がいました。室内でもいつも車いすが必要です。

その彼女に世界的に著名なインテリアデザイナーの大家に『キッチンの改装』を依頼できるチャンスが訪れました。そこで彼女はひとつだけ希望を伝えました。何を願ったでしょうか?」

 

キーワードは、高齢・女性・車いす・・

何を最優先に願ったでしょう。

 

答えは「お友達に自慢できるすてきなキッチン」

 

普通にこの答えが想像できるのがインクルーシブな社会です。

家を建てるときに、雨漏りしない屋根にしてください、玄関にはドアを忘れないでください、から頼む人はいません。

常識的に必要な物はいちいち頼まなくても大丈夫でなければ社会生活は不便です。ただその常識的が多様なのが現代社会です。その常識をTOPで慮ることができる意識を育むことが必要です。

 

参考「社会の課題を解決する参加型デザイン」ジュリア カセム、 平井 康之

 

グループワークの力

グループワークと社会構成主義

 

現代では1人の天才の力より100人の普通の人の協力のほうが成果が上がる。社会の中で何かを成し遂げるとき、このように言う人達がいます。世の中では仕事はプロジェクトチームで当たることが成功に近い方法のひとつとして時代のトップを走る企業も常識的に取り入れています。

学校で子供達学ぶことの大切なひとつとして、大人になったとき「自分の特徴を生かして人と力を合わせること」を悩んだり苦しまずにできる力を身につけておくことだと思います。言われるがまま、歯車のひとつとしてではなく。(1人の天才をチームで活かせるか否かも重要な視点でしょう)

また、1人では解決不可能な課題を人と一緒に取り組むと期待値以上の力を発揮できるという結果が得られるという教育研究もありこれも協働学習の要です。(この差を最近接発達領域といいます)

個人の成長からみると教育学的にはこちらの方が重要でしょう。これを深く研究実践している研究会が国内の授業・学校改革のみならず近隣諸国の教育改革でも成果をあげています。

協働学習は深く、漠然とグループ活動をさせるのではなくその場面では何を学びの焦点としているかも大切なことだと思っています。

→ヴィゴツキー・社会構成主義・学びの共同体研究会